すいません、ビニールありますか。

常ならぬ日々のこと。見聞きしたあれやこれやについて。平成生まれ。男性。東京都在住。フリーアルバイター。やや乱視ぎみ。

9/7

 秋の虫が鳴いている。夏が去った。

 夏の空の青さや雲の白さや木の葉の緑が冴え冴えしているのはいつも目のまえではなく頭のなかにあるときで、どんなに経験則から学んでも、来るべきその瞬間になると強すぎる太陽光にあてられてあちこち朦朧としてしまう。

 清流のか細い足音、風鈴の音、冷たい水のなかで無数の氷がぶつかりあう音、蝉の声。

 時間は電車の車窓から眺めている景色のようなもの。

 

 いま目の前のスピーカーからビル・エヴァンスの弾く「Someday My Prince Will Come」が流れている。もう一年以上ディズニーランドに行けてないなと思う。それはある種の指針になる気がする。

 この夜長の日に、うっかりあるディズニーリゾートのCMを見てしまった。 それはアニメーションで、美しくアレンジされた「夢はひそかに」が流れていて、ある女性の一生をディズニーリゾートを舞台に追いかけていくCMなのだけれど、この30秒のCMは素晴らしい作品といってもいいようなもので、端的に物語ることの本質を表している、と思う。人生が一日のなかにあって、女性の夢見る瞳は昼夜を問わず形を変えながらいつまでもロマンチックを湛えている。けれどもそれは上澄みだけをすくったものではなく、生活のなかに咲いたものだということが、魔法にかけられたようなあの不思議な空間のもつ説得力によって、描かれずに描かれている。そしてすべての人に絶対的な現実、入場したら必ず退場しなくてはならないという現実が、きちんとある。

 私は喉と胸のあいだにつっかかったなにかを取り除く術を知らない。音楽を止める。

 

 しかし気づけばもう夜明けが迫っている。そろそろ私は自分のノートにむかい、物語ることにいざと頭を絞らなくてはならない。

 インスタントコーヒーとスタンドライトのオレンジ色の朝をはじめるその前に、洗い物をしてしまおう。一日を始めるのだ。